• フォルクスワーゲン
  • TRANSIT
フォルクスワーゲンの
ふるさとを訪ねて
ヨーロッパはもとより世界中で愛される名車を生み出しつづける
フォルクスワーゲン。工業国、自動車大国、経済先進国─ 。
そんなキーワードが浮かぶドイツにおいて燦然たる歴史を誇る、
フォルクスワーゲンの故郷を巡るロードトリップ紀行。

ベルリン

テレビ塔から見下ろしたベルリンの街。中央左下に見えるのは公共劇場・フォルクスビューネ。

ベルリン
シュプレー川で夕陽を眺めていた女性。ちょっと鋭角なクールさをもった人がベルリンには多い印象。
混沌としたエネルギーに満ちた首都。
 ベルリンの玄関口・テーゲル空港。質実剛健なドイツ的イメージを地でいく建物、VWをはじめとする“車大国”を体現するドイツ車が行き交う風景に出迎えられて旅がはじまった。ベルリンは、かつて東西に分断されていた都市というイメージが強いが、今は連邦議会議事堂や首相府といった政治の要所を構え、首都としての存在感を示している。早速中心地へと車を走らせ、テレビ塔の展望台へ。高さ203m、360度を見渡せるガラス窓からは、様々な時代の建物がパッチワークのように入り混じった街が眼下に広がる。蛇行して流れるシュプレー川は夕陽を受けてきらめき、東西分断の名残は絵の具が混ざるように溶け合っている。

 ベルリンの中心地、ウンター・デン・リンデン。4頭の馬と勝利の女神像が君臨するブランデンブルグ門は東西の壁が崩壊した際には群衆が押し寄せ歓喜したメモリアルな場所だ。そこかしこに点在するランドマークは、どれも歴史の舞台として今にその姿を伝えている。ミッテ地区は、旧東ベルリンの残り香が漂うカルチャー発信基地。ブティックがひしめく表通り、グラフィティが刻まれた路地の壁……。経済が牽引する開発と若者たちのクリエイティブが同居した混沌が街のそこかしこに露出している。そのカオスそのものがベルリンの姿なのだろう。そして、現在進行形で変わりつづける街は圧倒的な熱量で訪問者を刺激してくるのだ。
ベルリン
交通量の多い大通りでも存在感を放つのはやはりThe Beetle。
ベルリン
ソーセージとポテトの組み合わせはドイツ人のソウルフード。

ドレスデン

カトリック旧宮廷教会の前には一台の赤い Polo。この組み 合わせだけで“ドイツらしさ” を感じるから不思議なものだ。

ドレスデン
ガラスの工場に隣接した公園には子ども向けの小さな電車が走る。幼稚園だろうか、かわいらしい声が響く。写真後ろには“ガラスの工場”が見える。
伝統と革新が息づく古都・ドレスデン
 18世紀、エルベ川を水上の道として交易で栄えた街がドレスデンだ。川辺を歩くと、1751年建造のカトリック旧宮廷教会やザクセン王家の宮殿として築かれた王宮を一望できる。華麗な装飾をまとった石造りの街並みは、まるでおとぎ話の世界のように美しい。しかし街の広範囲は第二次世界大戦で瓦礫の山になり、その後再建されたという歴史もある。時間を巻き戻したかのように甦った“古都”は、今ではドイツ屈指の観光地となり人びとの目を楽しませている。そんなドレスデンには、巨大なガラス張りの“ガラスの工場”と呼ばれるVWの施設がある。最新技術を搭載したハイブリッドモデルをはじめ、フラッグシップともいえる車種をメインに生産しているのだが、驚くべきはその様子を見学できること。ゆっくりとレーンの上を流れるように職人たちにより組み上げられていく様はドイツのクラフトマンシップの真髄を垣間見ているようだ。工場というよりは工房のような感じで、突き詰められた合理性による美しさすら覚えてしまう。

 旧市街の伝統的な古い街並みと最新テクノロジーが支える“ガラスの工場”のコントラストは、ドレスデンの旅を印象づける。見学を終え、工場を出た先の道路で年代モノのPoloが通り過ぎる。新旧が今も連綿と息づいている姿は伝統を守りながらも革新を 求めつづけるドイツの縮図のような気がした。
ドレスデン
緑豊かなエルベ川沿い。市街の喧騒から逃れられる憩いの場だ。
ドレスデン
ドイツでは車も多いが自転車も多い。うまく共存している。

ニュルンベルグ

ニュルンベルグの代名詞ともいえる中世の街並み。 15〜16世紀に建てられたものが多いのだとか。

ニュルンベルグ
味わいのある街並みに寄り添うような佇まいのパン屋さん。地元の人に愛されるお店。
絵本の世界に暮らす人びと。
 朝、ホテルの窓を開けると赤い屋根にとんがり帽子の教会が目に飛び込んできた。ここは神聖ローマ帝国の城塞都市・ニュルンベルグ。約1000年前に築城されたというカイザーブルク城を囲むように広がる旧市街へ繰り出すと、朝霧にむせぶこの地方ならではの木組みの家々が出迎えてくれた。

 車が走るとゴトゴトと音を立てる石畳はしっとりと濡れて行き交う人びとを映す。そして旧市街というだけあって、小径という言葉がぴったりなほど道が狭い。しかしみんな器用に走り、縦列駐車もキチンとこなす。それは所作ともいえるくらい美しく、かわいらしい家並みと「どうやって出すの?」と疑問符がつくくらいぴったりと隙間なく並んだ車たちが描く風景はフォトジェニックですらある。城へとつづく道には土産屋やレストランが軒を連ねるが、一歩路地裏へと足を踏み入れるとそこには人びとの暮らしが息づいている。どこを切り取っても絵本のような情緒に満ちた世界。1日歩き回っているうちに「ここの路地はあの広場につながっていて……」というふうに覚えてしまった。お気に入りは、ひっきりなしに客が訪れる街角のかわいらしいパン屋さん。早朝6時半にオープンするこのお店で白髪のおばあちゃんに焼きたてのパンとコーヒーを求めると、一瞬だけかもしれないけれどこの街の住人になったような気分がした。
ニュルンベルグ
カフェで数学の勉強をしていたパレットくんは高校生。まっすぐな眼差しが美しかった。
ニュルンベルグ
旧市街といえば石畳の道。心地よい揺れも旅情のひとつ。

ウォルフスブルグ

川沿いにそびえる工場。鍊瓦造りの建物に“VW”のロゴ が映える。奥には生産ラインなどの工場がつづいている。

ウォルフスブルグ
オーナーの訪れを待つ車が並ぶカータワー。
クルマに命が吹き込まれる場所へ。
 “Wolfsburg”のサインに従ってハイウェイを降りると、明らかに走っている車種が変わった。「笑っちゃうくらいVWばっかりだ!」。それもそのはず。ここウォルフスブルグは、フォルクスワーゲンが本社と巨大な工場を構え、アウトシュタットと呼ばれる博物館とテーマパークをしつらえた、まさにVWの本拠地なのだ。

 ウォルフスブルグの象徴にもなっている鍊瓦造りの煙突は、もはや歴史的建造物の雰囲気。対照的に、ガラス張りで“クール”なタワーも見える。チケットを買い、アウトシュタット構内に入ると、そこは家族連れで賑わっていた。自動車メーカーのテーマパークと聞くと社会科見学的なイメージを抱くかもしれないが、ここにあるのは大人から(もちろん生粋のVWフリークも)子どもも楽しめる知的なエンターテインメント。歴史的な名車の展示や体験ドライビングなどもあり時間が経つのも忘れてしまうほど。

 もっとも印象的だったのがカータワー。納車を待つ車が並ぶガラス張りの“立体駐車場”なのだが、タワー内のロボットがキビキビと動く様子を見ているとやはりドイツは工業国なのだとひとり頷いてしまう。アウトシュタットは納車センターという顔ももち、VWオーナーの多くはオーダーした車をここで受け取ることを希望するのだという。愛車とのはじめての出会いを思い出に刻む“聖地”。それがアウトシュタットなのだ。
ウォルフスブルグ
工場をバックに記念写真を撮っていた家族。「普段は遠くで暮らしている家族に生まれ育ったウォルフスブルグを見せたかったんだ」とお父さん。
ウォルフスブルグ
ちょうど納車に来ていた家族が新しい車の前で記念撮影中。

フランクフルト

フランクフルト
肉とポテトとパンがドイツ取材の定番メニュー。
メトロポリスとしてのフランクフルト。
 車窓に映る天を突くような高層ビル群。並走する車は一糸乱れぬ動きで車線を行く。

 フランクフルトは、ヨーロッパにおける先進工業国家としての誇りを顕示するような“洗練された大都市”という印象。一方で、旧市街の歴史地区・レーマー広場や旧市庁舎、13~15世紀に築かれたフランクフルト大聖堂など、古きよきドイツを感じさせるエリアも健在だ。先進を追いかけながらも古きを大切にするドイツの心ゆえか、経済発展の象徴ともいえるメトロポリスにありがちな堅苦しさはなく、むしろ“居心地のよさ”すら感じてしまう。

 その背景には、ドイツが大切にしているサステイナビリティ=持続可能性という考えがあるのかもしれない。そういえば、ウォルフスブルグのアウトシュタットもサステイナビリティをテーマにしていたことを思い出した。フォルクスワーゲンは、車の開発・生産という活動を通じて世界を取り巻く環境や人びとの暮らしをよりよいものへと進歩させ、次世代へとつないでいくことを目指している。その哲学は、フォルクスワーゲンという会社はもとよりドイツの人びとの心の奥底から放たれるものなのだろう。

 伝統と革新は、点と点ではなくひとつの線上にある。先人たちが築いてきた歴史を今に活かし、未来へと伝えていくこと。そんな使命に真摯に向き合うことがサステイナビリティの軸となる。1500㎞にも及ぶロードトリップを一緒に駆け巡ったGolfが、そう教えてくれたような気がした。